MARGINS & MACHINES
「言葉好き」が作るAI&IT系ブログ
余白と、演算。

物語の目で、
テクノロジーを読む。

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AIと言葉 / READING / 01

AIが続きを書けても、
私たちはページをめくる。

物語を「生成する」ことと「読む」こと。その違いを、読みかけの小説から考える。

暗い空間に浮かぶ、扇状に開いた本のイメージ
01

栞の手前で、話は止まっている

小説の途中に栞が挟まっている。主人公はまだ、あの人に会いに行くかどうかを決めていない。読んでいるこちらには用事ができて、本を閉じた。それから何日か、主人公はその場所で待っている。

物語の続きが気になる。こんなとき、続きをAIと続きを予想して会話する遊びをしてみた。
会いに行く話も、行かない話も、駅まで出かけて引き返す話も。頼み方を変えれば、気の利いた結末にだって出会えるかもしれない。

それでも、少し新しい遊びに興じはしたが、やはり私は栞の挟まった本を開きたい。続きを知るだけなら別の方法があるとして、何が私をこの一冊へ戻すのだろう。

02

望んだとおりに進まない一文

読んでいると、作者の選択に不満を持つことがある。そこで黙るなよ、と思う。なぜその人を死なせるのだろう、とも思う。もっと短く書けそうな風景が、何ページも続くことさえある。

その不満も含めて、私は読んでいる。読み手の注文に合わせては変わらない文章の前で、いったん足を止める。「ここは要らない」と判断したあとで、先へ進んでみる。ずっと後になって、あの風景の長さが必要だったと気づくことがある。最後まで必要だと思えないこともある。

どちらの場合も、そこには私の都合とは別の選択があった。私が望んだから置かれたわけではない一文が、自分の読み方の狭さや、譲れない好みを教えてくれる。

もちろん、AIに意外な展開を書いてもらうこともできる。ただ、読書中の私は、展開を選び直せる立場から少し離れたいのだと思う。注文を考える手を休めて、すでに書かれたものにしばらく付き合いたい。

03

あらすじに残らない時間

ある小説を説明してほしいと言われれば、登場人物と事件の順番を話せる。でも、それを読み終えるまでに自分の中で起きたことは、うまく説明できない。

たとえば、何気ない返事が急によそよそしく聞こえたこと。前のページに戻ると、同じ台詞がもう違って見えたこと。何も事件は起きていないのに、一段落だけ読み進めるのをためらったこと。

あらすじでは一行になる場所を、私はずいぶん長く歩いた。その時間は、結末を聞いても受け取れない。文章の順序に従って、まだ知らない状態を一つずつ通り過ぎる必要がある。

だから再読も不思議だ。結末を知っているのに退屈とは限らない。初読では通過した玄関や食卓の描写に、今度は立ち止まる。物語が同じでも、注意を向ける場所が変わる。本を読み直しているつもりで、自分が何を見る人になったのかを確かめている。

04

読み終えてから、話し相手を呼ぶ

AIが読書の邪魔になるとは思わない。むしろ、読み終えたあとに置いてみたい問いがある。

なぜ私は、あの登場人物だけを信用できなかったのか。最後の場面で救われたと感じたのは、何が変わったからなのか。感想がまだ言葉になる前に、話し相手がいてくれることはありがたい。

ただし、立派な説明を先にもらうと、そちらに自分の感想を寄せてしまいそうだ。だから最初の数行は、自分で書いておきたい。「この返事が嫌だった」「この部屋には入りたくない」。理由の分からない感想でも、そのとき自分が受け取ったものとして残す。

説明が上手であることと、私の読書に当てはまることは別々に確かめる。AIの返答を読んで、なるほどと思ったら本へ戻る。違う気がしたら、どの一文がそう思わせたのかを探す。その往復なら、読み方が増える気がする。

05

まだ会っていない結末へ

栞を抜いて、ページを開く。数日前の私は、主人公が会いに行くものと決めつけていた。ところが文章を読み返してみると、そう簡単に出かけられる人でもなかった。

続きを想像することと、続きを読むこと。その二つを競わせる必要はない。想像した話があればこそ、作者が選んだ道の意外さがよく見えることもある。

私が開きたいのは、まだ自分のものになっていないページだ。読めば気に入らないかもしれない。長く覚えているかもしれない。どちらになるか分からないまま、一枚だけめくる。

主人公はようやく立ち上がった。どこへ行くのかは、次の行に書いてある。

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